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2022.03.04
HARDWARERESEARCH

Quantinuum、バリウム137を使用して99.9904%のSPAM 忠実度を達成

※本報道資料は、Quantinuum社が2022年3月3日に発表したプレスリリースの抄訳です。

2022年3月3日、Quantinuumの研究チームは、量子ビットを量子状態で準備し、それを測定できた回数に関して、これまで達成されていた結果を何倍も上回る新たな記録を打ち立てました。

Alex An、Tony Ransford、Andrew Schaffer、Lucas Sletten、John Gaebler、James Hostetter、およびGrahame Vittoriniの研究チームは、非放射性バリウム137から形成した量子ビットを用いて、その状態準備と測定(SPAM)を、これまでの量子技術で最も高い99.9904%の忠実度(フィデリティ)で達成しました。この研究結果はarXivに投稿されています。

この研究は、量子産業やイオントラップ技術に大きな影響を与えるものです。
SPAMの忠実度を向上させることは、現在のノイズの多い量子コンピュータに蓄積されるエラーを減らすことにつながり、エラーがシステム内で連鎖して量子回路が機能しなくなってしまうことを防ぐフォールトトレラントシステムへの移行に不可欠です。

また、バリウム137から量子ビットを形成し、それを忠実に量子状態にすることができれば、イオントラップ型量子コンピュータのさらなる性能向上につながります。研究者たちは、より成熟し容易に利用できる技術である可視光領域のレーザーを用いて、量子ビットを初期化し、操作することが可能となります。

Quantinuum のPresident & Chief Operating Officerである Tony Uttleyは、次のように述べています。「今回の研究成果は、Quantinuum の研究チームと当社の高性能イオントラップ型量子コンピュータにとって大きな前進です」彼は続けて、「量子コンピュータ業界全体の進歩は、このような個々の技術的成果の積み重ねから生まれるものであり、将来のフォールトトレラントシステムへの道を切り拓くものです」と述べました。

SPAMとは?
「スパム」という言葉から連想されるものは、受信トレイにあふれる迷惑メールや、缶詰の「SPAM」などでしょうか。

量子コンピュータの分野では、理論物理学者のDavid DiVincenzoが言うところの量子コンピュータの動作に必要な5つの条件のうち「状態の準備」と「測定」の2つをSPAMと呼んでいます。具体的には、量子ビットを初期化(量子状態を準備)し、その出力を測定することを指しています。SPAMは、これらの作業を高い確率で成功させる能力、つまり忠実度という観点から評価されます。忠実度は量子コンピュータが重要なタスクをより少ないエラーで実行していることを意味するため、この数値が高いほど性能が良いということになります。

Quantinuumの研究者は、論理エラー率が物理エラー率に勝るポイントに到達するためには、SPAM忠実度が99.97〜99.99%に達する必要があると考えています。

なぜバリウムなのか?
中性のイッテルビウム原子は、イオントラップ型量子コンピュータのイオン源として長い間使用されてきました。イッテルビウムイオンは、レーザーで帯電され、量子ビットに変換されます。しかし、イッテルビウムの使用には課題も存在します。イッテルビウムイオンを操作するためには高価な紫外線レーザーが必要であり、またその結果を測定することも困難です。

一方で、バリウムイオンは比較的測定が容易で、より安価で安定した緑色領域のレーザーで操作することが可能です。しかし、非放射性バリウム137を用いた今回のQuantinuumの研究以前では、特殊な取り扱いを必要とする放射性バリウム133イオンを使うことでしか、良いSPAMエラー率を達成することができていませんでした。

Quantinuumの研究者でTechnical leadのDr. Anthony Ransfordは、次のように述べています。「非放射性バリウム137を使用して迅速に、かつ忠実度の高いSPAMが実現できるとは、これまでは誰も考えもしませんでした」彼は続けて、「我々は、他のどのアプローチよりも優れた、量子ビットの初期化および測定を可能にする方式を考案することができました。私たちが世界で初めて実現したことです」と述べました。

今後の展開
非放射性のバリウム137イオンを初期化できるようになったことは、あくまで第一歩にすぎません。今後の目標は、これらのイオンを将来のQuantinuumの量子ハードウェア技術に取り入れていくことです。

Tony Uttleyは、次のように述べています。「私たちは、非放射性バリウム137イオンを量子ビットとして用いることが、堅牢で拡張性の高い量子ハードウェアを実現する魅力的な方法であると考えています」

研究結果の詳細はこちらよりご覧いただけます。(英語)
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以上

ケンブリッジ・クオンタムについて
2014 年に設立され、世界有数の量子コンピューティング企業の支援を受けているケンブリッジ・クオンタムは、量子ソフトウェアと量子アルゴリズムのグローバルリーダーであり、急速に進化する量子コンピューティングハードウェアを最大限に活用することができます。ケンブリッジ・クオンタムは、欧州、米国、日本にオフィスを構えています。2021年11月30日にケンブリッジ・クオンタムは、ハニウェル・クオンタム・ソリューションズとの経営統合が完了し、Quantinuumを設立したことを発表しました。

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