• NEWS
INDEX
2022.05.20
RESEARCH

プレプリント:量子コンピューティング技術を用いた二酸化炭素回収のモデリング

Quantinuumの量子計算化学チームはTotalEnergies社と共同で、気候変動緩和における量子コンピュータの潜在的な使用方法を示した新しいプレプリント論文を発表しました( (リンク ») )。この成果は、CO2回収・隔離で使用するための材料発見のプロセスの一部として、量子コンピューティング技術を用いた材料のモデル化に関する新たな道を切り拓いたと言えます。

今回のコラボレーションにおいて、研究チームは炭素回収と量子コンピューティング技術を橋渡しすることが出来たと考えています。具体的には、金属有機構造体(Metal-Organic Framewrok / MOF)という炭素回収のために活発に研究されている材料と二酸化炭素分子との結合を説明する量子コンピューティングの方法論を開発しました。この化合物群は少ないエネルギーで二酸化炭素を吸着できるため、多くの科学的関心を集めています。
これらの合成材料は多孔質であるため、二酸化炭素分子と結合することが可能です。MOFは様々な構成を取ることができるため、「分子LEGO」と比較されます。これにより、特定の細孔サイズと反応性を設計することが可能です。原則として、MOFは特定の特性を持つ材料設計に使用されています。

古典コンピュータを利用してこれらのシステムをモデル化すると、多くの場合、不正確なソリューションとなってしまいます。そこで、Quantinuumの量子計算化学チームは、新しい量子技術手法を用いて、従来のアプローチの限界を潜在的に克服する方法を探索しています。計算空間の規模が大きく、多体的相互作用を取り扱うことが可能な自然な方法であることから、量子コンピューティング技術は、このようなシステムをモデル化する代替手段になると考えられます。

今日の量子コンピュータ(ノイズあり中規模量子デバイス、NISQ)は、計算に利用可能な量子ビット数と、計算誤差により制限を受けています。そのため、MOFのような複雑な材料のモデリングは困難です。この論文で示されているブレークスルーは、系を分割することで計算タスクを分け、量子コンピューティング技術と古典的手法を組み合わせることによって、ロバストで多目的なアプローチを提供するものです。

この研究により、今日の量子コンピュータを用いてMOF-CO2システムの理解を深める方法が明らかになりました。これにより、量子コンピュータを活用することによって、気候変動に取り組む上で重要な役割を果たすであろう課題の解決が加速することが予想されます。

QuantinuumのCEOであるIlyas Khanは、次のように述べています。「炭素回収と貯蔵技術に関する世界有数の企業であるTotalEnergies社との共同論文の発表は、量子化学の活用が大いに期待される分野において、重要なマイルストーンを示しました。TotalEnergies社とQuantinuumの科学者の共同チームは、今日の量子コンピュータを使用して、材料科学研究を実施する方法を提示しました。この方法は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が大気中の温室効果ガス濃度の安定化に重要な役割を果たすと述べている分野で示されたものです。この度の共同論文は、量子コンピュータが将来活用されていくことを示唆していると確信しています。」

論文は以下リンクよりご確認いただけます。
(リンク »)

以上

ケンブリッジ・クオンタムについて
2014 年に設立され、世界有数の量子コンピューティング企業の支援を受けているケンブリッジ・クオンタムは、量子ソフトウェアと量子アルゴリズムのグローバルリーダーであり、急速に進化する量子コンピューティングハードウェアを最大限に活用することができます。ケンブリッジ・クオンタムは、欧州、米国、日本にオフィスを構えています。2021年11月30日にケンブリッジ・クオンタムは、ハニウェル・クオンタム・ソリューションズとの経営統合が完了し、Quantinuumを設立したことを発表しました。

□ 本件に関するお問い合わせ
ケンブリッジ・クオンタム・コンピューティング・ジャパン株式会社 広報事務局
(共同PR株式会社)
担当:伊藤・石谷
TEL: 070-6464-5236(伊藤)
E-mail:cqc-pr@kyodo-pr.co.jp
このプレスリリースの付帯情報

関連情報へのリンク