Quantinuum、4096量子ボリュームを達成
Quantinuumは、世界最高レベルの性能を誇る量子コンピュータの開発において、新たなマイルストーンに到達したことを発表しました。
Quantinuumが開発・運用する量子コンピュータであるSystem Model H1-2は、Quantum Volume(量子ボリューム)で4096を達成しました。量子ボリュームは、IBMが2019年に設定した、量子コンピュータの総合的な能力と性能を測定するための指標です。
これにより、Honeywellの技術に基づき開発された量子コンピュータであるQuantinuumのHシリーズ( (リンク ») )は、量子ボリュームの測定において2年振り6度目となる業界記録を樹立しました。
Honeywell Quantum Solutionsは、2020年3月、つまり2021年後半にCambridge Quantumと経営統合をしてQuantinuumを設立する以前から、今後5年間に渡り、毎年1桁ずつイオントラップ技術の性能を向上させる目標を掲げています。
Quantinuumの社長兼最高執行責任者であるTony Uttleyは、「今回の成果は、最高性能の量子ハードウェアを開発するという当社の約束と責任を2年連続で実現したことになり、我々にとって大きな前進と言えるでしょう」と述べました。
継続的な性能向上
昨年末に稼働したH1-2が量子ボリュームのマイルストーンを達成したのは、今回で4ヶ月振りの2回目となります。なお、同システムは、2021年12月に2048量子ボリュームを達成し、当時の記録を更新しています。
Uttleyは、「量子ボリュームの倍増を達成できたのは、我々が一貫して性能向上のための取り組みを継続してきたことの成果に他なりません。」と述べています。
Quantinuumは現在、H1-1およびH1-2という2台の商用量子コンピュータを運用しています。これらのハードウェアの更なる性能向上は、顧客向けのプロジェクトが一段落した後、一時的に稼働を中断させて実施しています。
Uttleyは、「このように、H1-1とH1-2の稼働を一時的に中断することで、システムの性能を向上し、新たな機能を追加する機会を継続的に得ることができます。」と述べました。また、彼は続けて、「プロジェクトを実行することを通じて、量子コンピュータについて多くのことを学ぶことができます。そして、そのような経験も活用することで、少しずつハードウェアの性能を高め、また忠実度も高く維持することができるのです。」と述べました。
データ
このマイルストーンにおける1量子ビットの平均ゲート忠実度は99.994(3)%、2量子ビットの平均ゲート忠実度は完全に接続された量子ビットで99.81(3)%、測定忠実度は99.72(5)%でした。 Quantinuumの研究チームは、標準的なQV最適化技術を使用して、各100ショットの200回路を実行し、回路あたり平均152.97の2量子ビットゲートを得ました。
System Model H1-2は、99.99%以上の信頼度で2/3の閾値を超える69.04%の確率でヘビー・アウトプットの観測結果を得て、4096量子ボリュームのベンチマークを問題なく達成しました。同チームは、Quantinuumの研究員であるCharlie Baldwin博士とKarl Mayer博士が開発した新手法( (リンク ») )を使用して、信頼区間の算出を行いました。
上のプロットは、4096量子ボリュームのテストにおける各回路の個別のヘビー・アウトプットを観測する確率を示しています。青い線は累積平均ヘビー・アウトプット確率、緑の領域は新方式で計算した累積2シグマ信頼区間です。ヘビー・アウトプットを観測する確率は100回路後に2シグマ信頼度で2/3の閾値を超えています。
上のプロットは、Quantinuumによる量子ボリュームの測定値の伸びを示したものです。各テスト毎に、ヘビー・アウトプットを観測する確率 ‘h’ を記載し、マーカーの色でシステムを識別しています。グレーの破線は、量子ボリュームを毎年1桁ずつ増加させるという当社の目標を示しています。
今後の展開
Uttleyは次のステップとして、Quantinuumの2台の量子コンピュータの量子ビット数を増やし、ゲート忠実度の向上の継続を挙げました。
「System Model H1-2は、4096量子ボリュームを達成するために、全結合された12量子ビットを全て使用しました 」とUttleyは述べています。「当社は、12量子ビットで出来ることは、既に全て行ったと考えています。 我々は今後もハードウェアの更なる性能向上のため、引き続き量子ビット数を増大させていきます」
以上
Quantinuumの量子計算化学チームはTotalEnergies社と共同で、気候変動緩和における量子コンピュータの潜在的な使用方法を示した新しいプレプリント論文を発表しました( (リンク ») )。この成果は、CO2回収・隔離で使用するための材料発見のプロセスの一部として、量子コンピューティング技術を用いた材料のモデル化に関する新たな道を切り拓いたと言えます。
今回のコラボレーションにおいて、研究チームは炭素回収と量子コンピューティング技術を橋渡しすることが出来たと考えています。具体的には、金属有機構造体(Metal-Organic Framewrok / MOF)という炭素回収のために活発に研究されている材料と二酸化炭素分子との結合を説明する量子コンピューティングの方法論を開発しました。この化合物群は少ないエネルギーで二酸化炭素を吸着できるため、多くの科学的関心を集めています。
これらの合成材料は多孔質であるため、二酸化炭素分子と結合することが可能です。MOFは様々な構成を取ることができるため、「分子LEGO」と比較されます。これにより、特定の細孔サイズと反応性を設計することが可能です。原則として、MOFは特定の特性を持つ材料設計に使用されています。
古典コンピュータを利用してこれらのシステムをモデル化すると、多くの場合、不正確なソリューションとなってしまいます。そこで、Quantinuumの量子計算化学チームは、新しい量子技術手法を用いて、従来のアプローチの限界を潜在的に克服する方法を探索しています。計算空間の規模が大きく、多体的相互作用を取り扱うことが可能な自然な方法であることから、量子コンピューティング技術は、このようなシステムをモデル化する代替手段になると考えられます。
今日の量子コンピュータ(ノイズあり中規模量子デバイス、NISQ)は、計算に利用可能な量子ビット数と、計算誤差により制限を受けています。そのため、MOFのような複雑な材料のモデリングは困難です。この論文で示されているブレークスルーは、系を分割することで計算タスクを分け、量子コンピューティング技術と古典的手法を組み合わせることによって、ロバストで多目的なアプローチを提供するものです。
この研究により、今日の量子コンピュータを用いてMOF-CO2システムの理解を深める方法が明らかになりました。これにより、量子コンピュータを活用することによって、気候変動に取り組む上で重要な役割を果たすであろう課題の解決が加速することが予想されます。
QuantinuumのCEOであるIlyas Khanは、次のように述べています。「炭素回収と貯蔵技術に関する世界有数の企業であるTotalEnergies社との共同論文の発表は、量子化学の活用が大いに期待される分野において、重要なマイルストーンを示しました。TotalEnergies社とQuantinuumの科学者の共同チームは、今日の量子コンピュータを使用して、材料科学研究を実施する方法を提示しました。この方法は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が大気中の温室効果ガス濃度の安定化に重要な役割を果たすと述べている分野で示されたものです。この度の共同論文は、量子コンピュータが将来活用されていくことを示唆していると確信しています」
論文は以下リンクよりご確認いただけます。
(リンク »)
以上
ケンブリッジ・クオンタムについて
2014 年に設立され、世界有数の量子コンピューティング企業の支援を受けているケンブリッジ・クオンタムは、量子ソフトウェアと量子アルゴリズムのグローバルリーダーであり、急速に進化する量子コンピューティングハードウェアを最大限に活用することができます。ケンブリッジ・クオンタムは、欧州、米国、日本にオフィスを構えています。2021年11月30日にケンブリッジ・クオンタムは、ハニウェル・クオンタム・ソリューションズとの経営統合が完了し、Quantinuumを設立したことを発表しました。
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