Quantinuum、量子計算化学ソフトウェアプラットフォームInQuanto™のバージョン2.0を発表
※本報道資料は、Quantinuumが2022年12月13日に配信したプレスリリースの抄訳です
本日、Quantinuum (クオンティニュアム、以下Quantinuum)は、 InQuantoの新たなバージョンを発表しました。新バージョンであるInQuanto 2.0は、これまでと同様、多機能で拡張性があり、量子コンピュータをまだ本格的に利用したことがないユーザーにも活用いただけるように設計されています。
InQuanto(読み:インクァント)※1 は、最先端の量子計算化学ソフトウェアプラットフォームであり、エネルギー、自動車、医薬品、素材などの分野で世界をリードするパートナー企業との重要な共同研究の集大成として開発されました。InQuantoを用いることで、最も強力な古典コンピュータでさえ、未だ解くことが困難な物質や分子の問題に対して、計算化学者をはじめとするユーザーは、現行の量子コンピュータで様々な量子アルゴリズムを簡単にトライアルできるようになります。
※1 InQuanto(インクァント)
様々な量子コンピューティングツールをひとつのアプリケーションとしてまとめたプラットフォームで、主に企業で計算化学の業務に携わっている方を対象にQuantinuumが独自開発しました。
【InQuanto 2.0でできること】
InQuanto 2.0 は引き続き、最新の量子アルゴリズム、高度なサブルーチン、化学に特化したノイズ軽減技術に基づいて構築されています。その中には、最近公表されたばかりの手法も含まれています。新バージョンでは、状態ベクトル計算を1桁高速化できる新しいプロトコルクラスや、対称性を利用して必要メモリを削減できる積分演算子クラスなど、効率を高める新機能を追加しています。
さらに、カスタム ansätze※2 を開発するための新しいツール、新しい埋め込み技術、効率と精度を向上させる新しいハイブリッド手法が導入されています。また、これらの急速な進歩は、計算化学者がInQuantoをワークフローに組み込むための新しい方法によりサポートされています。それは、可視化や他の化学パッケージとの相互運用性の改善であったり、Amazon Braketとの最近のデモンストレーションなどの、クラウドで実行する能力の実証であったりと、様々です。
最もエキサイティングな進歩は、当然ながらパートナーの多様な仕事に反映されています。今日行われている作業の一部は、将来的にInQuantoに組み込まれるメソッドや技術に反映され、パートナーのこれまで以上に高度なニーズを満たすことができると考えています。
※2 ansätze(アンザッツ)
問題の特性に応じて最適解を効率的に探索するために用いられる角度パラメータ付きの量子回路。量子計算化学では主に、最適化すべきエネルギー期待値を求めるための試行電子波動関数を表現するのに用いられる。
【InQuanto 2.0の新機能(量子コンピュータを使用する計算化学者にとって最適な選択肢であり続けるための新機能)を搭載】
(効率性)
● プロトコルクラスにおけるワークフローの改善により、より効率的な小規模テスト計算を実現 ― 一部の状態ベクトル計算で最大10倍のスピードアップを実現
● 対称性を利用した積分演算子クラスにより、化学ハミルトニアンの2電子積分を効率的に処理し、メモリの使用容量を50%削減
● N粒子縮約密度行列の最適化されたコンピュータブルクラス(Computables)
(アルゴリズム群)
● 多参照計算をサポートし、新しいタイプの変分量子アルゴリズムを可能にする幅広い再構築されたansätzeを搭載。改良されたカスタム ansätze 開発ツールも含まれている
● 変分量子ソルバーの一般化により虚数および実時間進化シミュレーションが可能
● フラグメント分子軌道法(Fragment Molecular Orbital method)の追加
● 4粒子縮退密度行列を測定し、VQEエネルギーを補正する新たなQRDM-NEVPT2法の追加
(ユーザーエクスペリエンス)
● FCIDUMPの読み込み/書き込みにより、他の量子化学パッケージとの統合性が向上
● ユニットセル可視化の拡張、およびオペレータレベルでのトロッター分解のサポート
● Quantinuumが開発・運用する量子コンピュータH-Seriesにおけるリソースコスト推定の改善