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2025.01.29
ANNOUNCEMENT

ソフトバンクとクオンティニュアム、量子コンピューティングの実用化に向けたパートナーシップを発表 ~実用的な市場導入事例による量子データセンターのビジネスモデルの開発に向けたパートナーシップ~

2025年1月29日
ソフトバンク株式会社
Quantinuum

ソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川潤一、以下「ソフトバンク」)とQuantinuum(本社:米国コロラド州、President and CEO:Rajeeb Hazra、以下「クオンティニュアム」)は、量子コンピューターの実用化に向けた共同研究を開始することに合意しました。両社はそれぞれの強みを結集し、革新的な量子コンピューティングソリューションの開発を目指します。2025年は国際量子科学技術年(International Year of Quantum Science & Technology、IYQ)であり、両社は共同での取り組みを通して、量子コンピューティングの新たなビジネス機会の創出、情報革命による人類と社会への貢献を目指します。

量子コンピューティングの必要性
現在、AI(人工知能)は多くの分野でその強力な性能を発揮していますが、複雑な最適化問題や因果関係の解明、基礎方程式に基づく高精度のシミュレーションなど、従来のAI技術では計算できない課題が少なくありません。これらの課題解決のために量子コンピューティングの有用性が求められています。量子コンピューターは、古典的なコンピューターでは実行不可能な計算を高速で行う能力を持つため、これらの難題を解く新たな鍵と考えられています。

さらに、CPU-GPU-QPU(量子処理装置)のハイブリッドアプローチにより、AIの能力を拡張できる可能性があります。このハイブリッドシステムは、各処理装置の特性を組み合わせることで、より高度で多様な計算を実行できるため、従来の限界を超える新しいソリューションの提供が期待されています。

ソフトバンクとクオンティニュアムは、今回の共同研究を通して、量子コンピューティングの可能性を追求していきます。

量子コンピューターの現状と課題
現状の量子コンピューターには多くの期待が寄せられる一方、量子コンピューティングの事業化に向けては以下の三つの課題が存在します。これらを解決するには技術とビジネスの両方の深い理解が必要です。

(1)ビジネスモデルの構築
 ・初期投資および運用コスト:量子コンピューターの開発や導入に必要となる膨大な初期投資と運用コストに対  し、具体的なコスト回収策が不足しており、企業の開発・導入意欲が抑制される。
 ・収益モデルの明確化:量子コンピューターの提供手法や利用料金の設定など、収益を上げるためのビジネスモデルが具体化されていない。

(2)具体的ユースケースの確立
・ユースケースの発掘:量子コンピューターがどの分野で具体的に役立つかを示すためのユースケースが不足。特に量子化学計算や機械学習など、明確な事例を通して市場規模と収益モデルを理解することが必要。
・市場の理解と収益予想:量子コンピューターでしか計算できずかつ量子コンピューターが商業的に利用可能な領域を具体的に特定し、その時期と規模を予測することが重要。

(3)ハードウエア・ソフトウエア技術の進化
・ハードウエアの限界と課題:現在の量子コンピューターで実用的な問題を扱うには、ハードウエア性能(量子ビット数や操作精度)は不十分であり、実用化にはさらなる高性能化が求められる。
・ソフトウエア開発とエラー対策:従来手法と組み合わせたハイブリッドアルゴリズムの開発やエラー抑制・緩和・訂正技術の進展が不可欠であり、これにより実用的な計算が可能となる。また、ハードとソフトが相互に補完し合う形での技術開発も不可欠。
・サービス提供の時期判断:技術進化のスピードと市場のニーズを見極め、最適なタイミングでサービスを提供するためには、深い技術理解に基づいた判断が必要。

量子コンピューターの課題に向けた取り組み
ソフトバンクとクオンティニュアムはこれらの課題を解決し、量子コンピューターの実用化を推進するため、共同で次の取り組みを行います。

(1)量子データセンターの実現に向けた共同市場調査・ビジネスモデル開発
・CPU-GPU-QPUの組み合わせにより高度な計算処理ができる「量子データセンター」の実現に向けて、日本市場を足がかりにした、アジア太平洋地域などのグローバルな市場調査、それに基づく具体的なビジネスモデルの探索
・レベニューシェア、コストシェアなど、投資リスクの低減手法の共同検討

(2)量子ユースケースのタイムラインの構築と実機検証
・ソフトバンクが事業上で抱えている課題をユースケースとして提供する。
・量子化学とネットワーク分析におけるユースケースの明確化と、ユースケースの実現時期を示すタイムラインの構築。量子化学ではAll Optical Network用の新規光スイッチ材料探索を、ネットワーク分析ではソフトバンクの通信ネットワークにおける異常検知・不正検知への応用を想定。
・限られたハードウエア資源を有効活用するソフトウエア技術の開発、CPU-GPU-QPUの連携手法の探索

各社のコメント
クオンティニュアムのPresident and CEOであるラジーブ・ハズラは、以下のように述べています。
「ソフトバンクとの提携は、量子コンピューティングの進化における極めて重要な瞬間です。両社の強みを組み合わせることで、AIの機能を強化するだけでなく、長い間達成できなかった課題にも取り組む革新的なソリューションを実現できるようになります。私たちは協力して、量子技術が複数の業界にわたって変革的な進歩を推進する未来の基盤を築いていきます」

ソフトバンクの執行役員 兼 先端技術研究所 所長の湧川隆次は、以下のように述べています。
「ソフトバンクは量子コンピューターの可能性を信じ、社内であらゆる問題を量子コンピューターで試験評価をして、一定の結果が得られ始めています。一方で、通信事業者として量子コンピューターを日本でどのようにサービス提供をするかについて課題が多く残っています。世界最高性能の量子コンピューターハードウエアを擁するクオンティニュアムとの取り組みにより、量子コンピューターにしか解けない問題を世界に先駆けて見極め、量子コンピューターの実用化が大幅に早まることを楽しみにしています」

量子コンピューティングは、医療、金融、物流、エネルギーなど多岐にわたる分野での問題解決に寄与することが期待されます。ソフトバンクとクオンティニュアムは、この取り組みを通じて、未解決の難題に挑戦するだけでなく、新たな市場機会を創出し、社会全体における技術革新を促進します。

Quantinuumについて
Quantinuum(クオンティニュアム)は世界最大の統合型量子ソリューション企業であり、強力な量子コンピューターと独自の量子アプリケーションの開発を通して、材料探索、サイバーセキュリティー、AIなどの飛躍的な発展に貢献しています。370人以上の科学者とエンジニアを含む約500人の従業員を擁し、世界中で量子技術による革新をリードしています。

・SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
・その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。