QUANTUM COMPUTING _ SOFTWARE
InQuanto(インクァント)はクオンティニュアムが開発した量子計算化学ソフトウェアプラットフォームです。InQuantoは様々な量子コンピューティングツールをひとつのアプリケーションとしてまとめたプラットフォームで、主に企業で計算化学に関する業務に携わっている方々を想定ユーザーとして開発しました。
InQuantoの開発にあたっては、クオンティニュアムがこれまで実施した様々な企業さま(BMW、Honeywell、JSR、日本製鉄、TotalEnergiesなど)との共同研究の過程で得られた知見が最大限に生かされています。
量子コンピュータは、化学反応のシミュレーションや物性予測の精度向上における活用が期待されていますが、今日の量子コンピュータにはノイズなどの課題が存在するため、本格的な産業利用にはさらなる性能の向上が必要です。
しかしながら量子コンピュータは、一朝一夕では使いこなせません。今のうちから将来の具体的なユースケースを検討・特定し、必要に応じてプロトタイピングを始めておくことが、将来的な量子コンピュータの利用には重要となります。
そこでクオンティニュアムはInQuantoを開発しました。InQuantoを使えば、最新の量子アルゴリズムを様々なハードウェアやシミュレータ上で手軽に利用できるようになります。InQuantoを使い始めた瞬間から、化学計算における量子コンピューティングの可能性を実感できるでしょう。
Pythonベースの
プログラミング
Pythonベースのソフトウェアプラットフォームであり、Jupyter環境でプログラミングを行うことが可能です。
ハードウェアの互換性
クオンティニュアムのSDKである「TKET」を用いて実装されており、数行のコード変更のみで実行する量子コンピュータやシミュレータを切り替えることが可能です。
最新のアルゴリズム群
最新のNISQアルゴリズムが内蔵されており、量子化学の変分アルゴリズムの代表格である Variational Quantum Eigensolver (VQE)も簡単に実装・実行することが可能です。
独自のノイズ低減技術
クオンティニュアムが独自開発した、化学に特化したノイズ低減技術が活用されています。
CASE.1
タンパク質―リガンド相互作用の計算
Roche
タンパク質とリガンド間の相互作用の計算に、世界で初めて量子コンピュータを適用しました。計算に際しては、今日の量子コンピュータにおいて実行できるよう、InQuantoの系を分割する機能を活用しています。
CASE.2
鉄の結晶のシミュレーション
日本製鉄株式会社
InQuantoを活用し、鉄の結晶を2つの異なる相でシミュレートすることに成功しました。このアプローチでは、現状の量子コンピュータを活用する際の重要なファクターであるデバイスノイズの大幅な低減を実現しています。
CASE.3
多孔性金属錯体のモデリング
TotalEnergies
フマル酸塩金属錯体におけるCO2吸着問題をテーマに、InQuantoを活用したシミュレーションを実施。気候変動対策において重要な次世代型の吸着材料開発へInQuantoが貢献できる可能性を示しました。
量子コンピュータを用いた材料モデリングの今後の進歩のためには、量子技術と我々のアプリケーションの両方に対する深い理解が必要不可欠です。
燃料電池の専門知識と高度に予測可能な量子コンピューティングシミュレーションを組み合わせることで、実際の実験を伴わないプロトタイピングに向け、新材料開発を加速することができます。
JSRは早い時期からクオンティニュアムとパートナーシップを締結しています。InQuantoのベータテストにも参加しており、新規素材や物性予測の研究開発への適用可能性について検討してきました。
InQuantoはマニュアルが分かりやすく、量子化学計算に必要なアルゴリズムがモジュールとして予め用意されているため、量子コンピューティングの深い知識がない研究者やエンジニアでも手軽に使用できる点が非常に優れていると感じています。
Honeywellは、量子コンピューティングをどのようにビジネスに利用するかを理解することに、大変興味があります。InQuantoのようなツールは、環境性能を向上させた新しい化学物質を発明・発見する上で貴重な役割を果たすことでしょう。
量子コンピュータの世界的なパイオニアであるクオンティニュアムと協業できることを非常にうれしく思います。InQuantoは、化学産業の研究開発活動に大きなイノベーションをもたらすと確信しています。当社の幅広い事業資産と業界・地域における独自のポジションを活かし、クオンティニュアムとともに、お客様が新たな革新的価値を創造することをサポートしてまいります。