Quantinuum、量子自然言語処理ソフトウェアツールキット λambeqのメジャーアップデートを発表
PennyLaneとの統合開発環境の導入、モデルのトレーニングパッケージの改良、自然言語処理を初めて学ぶ量子分野の専門家へのサポート提供を新たに実施
世界最大級の統合型量子コンピューティング企業であるQuantinuum(クオンティニュアム、以下Quantinuum)は、量子コンピュータで自然言語処理が行えるオープンソースPythonライブラリおよびツールキットλambeq(ランベック、以下λambeq)をバージョン0.3.0にメジャーアップデートしたことを発表しました。
※本資料は、Quantinuumが2023年4月12日に公開した資料の抄訳です。
今回のアップデートでは、ユーザーエクスペリエンスの向上だけでなく、自然言語処理(Natural Language Processing, NLP)や機械学習(Machine Learning, ML)を初めて学ぶ量子コンピュータ分野の開発者やエンジニアの増加など、急速に拡大するユーザーコミュニティに対して、λambeqが提供する複数の機能の改良や拡張を行っています。
今回のアップデートの中で、最も重要なポイントは以下の通りです。
・PennyLaneとの統合開発環境の導入
・モデルのトレーニングパッケージの改良
・自然言語処理や機械学習に関する新たなチュートリアルの提供(量子分野の専門家向け)
PennyLaneとの統合開発環境の導入による新たな可能性
今回のアップデートの大きなポイントは、世界中のエンジニアや開発者に広く利用されている量子コンピューティングライブラリであるPennyLaneを統合したことです。これにより、λambeqユーザーはPennyLaneModelを使用して、パラメータ付き量子回路(Parameterized Quantum Circuit, PQC)から数値的に算出された勾配をPyTorchなどの機械学習ライブラリのモジュールに渡すことで、ハイブリッド量子古典モデルを開発できるようになりました。この統合は、量子コンピュータを活用して自然言語処理に取り組む研究者や開発者の新たな可能性を引き出します。
充実したモデルのトレーニングパッケージ
また、今回のアップデートではモデルのトレーニングパッケージも改良されています。具体的には、λambeqで使用できる新たな損失関数が追加されています。これによりユーザーは、分類や回帰などの標準的な実装機能を使用することで、より簡単にモデルをトレーニングすることが可能です。そのため、自作の損失関数を用いることなく研究開発に集中することができます。開発チームはλambeqを完全に機械学習対応にすることを目指しており、今回のアップデートでより大規模なモデルのトレーニング性能を向上できるようになったことは、そのような取り組みの一部となっています。
量子コンピューティングのエンジニアに向けた自然言語処理や機械学習に関する学習のサポート
さらに、今回のアップデートでは、新たにNLP-101のチュートリアルをサポートしたことも特徴です。これは、量子自然言語処理や量子機械学習に新たに関心を抱くようになったユーザーからのフィードバックを受けて開発されました。λambeqの新規ユーザーの多くは、テキストの前処理などの技術や、実験を成功させるために必要なベストプラクティスについて深い知識を持ち合わせていません。
また、量子機械学習や量子自然言語処理に取り組む開発者や技術者が、λambeqを使用することでどのようなことができるかを検討するための技術チュートリアルがノートブック形式で近日公開される予定です。
その他のアップデート
上述のアップデートに加え、以下のような機能の拡張や修正も行われています。
・Python 3.11のサポート
・BobcatParser model download methodにおけるフェールセーフの改善
・SPSAOptimizerやNumpyModel等に関する各種バグの修正
・例外処理やドキュメンテーション要件の強化
コミュニティにおける量子自然言語処理
今回のλambeqのバージョン0.3.0へのアップデートは、Quantinuumが量子自然言語処理とそのアプリケーションの発展を支援するための自然なステップであると言えます。Quantinuumは、ツールキットを継続的に強化・改良し、最先端のインテグレーションやリソースを提供することで、成長を続ける自然言語処理および量子自然言語処理のコミュニティの研究者、開発者やユーザーのために道を切り拓いています。量子自然言語処理は、AIの限界を押し広げるような可能性を最大限に利用し、GPT-4のような大規模言語モデルによって部分的に示された非常に有望な可能性を本当の意味で活用する方法を提供します。同時に、量子自然言語処理は、このような古典的技術のよく知られた欠点の解決にも貢献を続けるでしょう。
関連情報
•For full technical documentation, visit GitHub: https://cqcl.github.io/lambeq/
•The λambeq Discord server is also a very good place to go for community support on your QNLP projects: https://discord.gg/x9ccCRnd6J
•Look out for a more in-depth technical announcement soon on the PennyLane blog
Quantinuumについて
Quantinuumは、Honeywell Quantum Solutions のハードウェアと Cambridge Quantum のミドルウェアおよびアプリケーションを併せ持つ世界最大級の統合型量子コンピューティング企業です。科学主導・企業駆動(science led, enterprise driven)で、量子コンピューティングと化学、サイバーセキュリティ、金融、最適化などのアプリケーションの開発を加速しています。エネルギー、物流、気候変動、健康などの分野で、世界で最も差し迫った問題を解決するためのスケーラブルで商業的な量子ソリューションを創造することに重点を置いています。米国、欧州、日本に拠点を有し、350 名以上の科学者を含む 480 名以上の従業員を擁しています。
Xanaduについて
Xanadu is a Canadian quantum computing company with the mission to build quantum computers that are useful and available to people everywhere. Founded in 2016, Xanadu has become one of the world's leading quantum hardware and software companies. The company also leads the development of PennyLane, an open-source software library for quantum computing and application development. Visit www.xanadu.ai or follow us on Twitter @XanaduAI.
PennyLaneについて
PennyLane is an open-source software framework for quantum machine learning, quantum chemistry, and quantum computing with the ability to run on all hardware. To find out more, visit the PennyLane website,or check out the PennyLane demos: a gallery of hands-on quantum computing content (https://pennylane.ai/qml/demonstrations.html).