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2023.07.12
HARDWARERESEARCH

QuantinuumのHシリーズ量子コンピュータが加速度的に性能を向上

量子ボリュームの記録を3つ更新し、217218219を達成

※本資料は、Quantinuumが、2023年6月30日に公開した資料の抄訳です。

この6ヶ月間で、Quantinuum の H シリーズ量子コンピュータは爆発的な性能向上を実現しました。Quantinuum のシステムモデル H1-1 (Powered by Honeywell) は、2023年2月に発表された214 = 16,384量子ボリューム(QV)から、現在219 = 524,288量子ボリュームになることを実証しました。 完全な透明性を確保するため、この結果に関する詳細とデータは GitHub リポジトリに全て掲載されています。 524,288量子ボリュームとは、H1-1でこれまで二番目に高いとされていた量子ボリュームの値の1,000倍に相当します。

図1:Hシリーズの進歩 量子ボリューム向上の軌跡

図2:H1-1上の量子ボリュームデータに対する(左)217、(中央)218、(右)219の重出力確率

2020年に最初の量子コンピュータである HØ を発表したとき、私たちは大きな目標を掲げました。HØ は6量子ビット、量子ボリューム 26 = 64 で商用利用が開始されました。その際、私たちは商用マシンの量子ボリュームを5年間、毎年10倍ずつ増加させ、2025年末までに量子ボリュームを8,388,608、すなわち 223 にするという大胆で思い切った約束をしました。 過剰な宣伝が非難されがちなこの業界において、このような約束は容易に忘れられるものですが、私たちは忘れることはありませんでした。Quantinuum の科学者とエンジニアは、量子コンピュータの総合的な性能を体系的に向上させるため、たゆまぬ努力を続け、次々と新たな記録を達成し続けたのです。

図1が示すように、2020年から2023年初頭にかけて、私たちは着実に量子ボリュームを増やし、エラーを低減しながら量子ビット数を増やすことが、計算能力の向上に直結することを実証してきました。 2023年に入ってからも量子ボリュームの向上に関する複数の発表を行っており、2月には H1-1 が213を飛び越えて215の量子ボリュームを達成したと発表しました。2023年5月には、32量子ビットの H2-1 を発表し、量子ボリューム216を達成しました。 そして今回、H1-1 の217、218、219の量子ボリュームの連続的な向上を発表できることを嬉しく思います。

重要な点は、これらの結果は注目を集めるための見せかけの結果ではなく、また、システムをより良く見せようと特別な較正が行われた結果でもないということです。私たちの量子ボリュームデータは、商用システム上で実際に行われたお客様のジョブを織り交ぜて取得されたものです。 つまり、ここで発表されている内容は私たちの体験であるともに、お客様の利用体験でもあるのです。

2020年に約束した年率10倍の改善に留まらず、過去6ヶ月間の改善ペースは30倍であり、5年間の約束から少なくとも1年は加速しています。

これらの実証は H1-1 を用いて行われましたが、H1-2(現在は20量子ビットにアップグレード)と、最近リリースされた我々の第2世代システムである H2-1 の設計には類似性があるため、今回の実証結果を共有し、同じ結果を得ることは容易であると考えられます。

歴史が浅く、急速に発展しているこの業界では、どのベンチマークを使うのがベストなのか意見が分かれることもありますが、IBM が開発した量子ボリュームは、紛れもなく厳密なものと言えます。 量子ボリュームは、どのゲート型の量子コンピュータでも測定が可能です。量子ボリュームは相互評価を受けており、測定を行うための前提条件とプロセスが明確に定義されています。

量子ボリュームの改善には一貫したエラーの低減が必要であり、どのような用途であっても量子ボリュームの改善が性能向上につながる可能性があります。 実際に、量子コンピュータに期待される指数関数的な性能向上を実現するためには、このエラー率を継続的に低減する必要があります。これら3つの新しい量子ボリューム実証実験による2量子ビットのゲートエラーの平均は0.13%と業界で最も良い水準でした。 我々は多くのベンチマークで測定を行っていますが、こうした理由から量子ボリュームをシステム全体の主要ベンチマークとして採用し、パフォーマンスを報告しています。

どのベンチマークが優れているかという議論はさておき、厳密なベンチマークにおける前年比の改善は偶然に起こるものではありません。 Hシリーズのハードウェアに携わる献身的で優秀な科学者やエンジニアが、そのエラーモデルを深く理解し、全体的なパフォーマンスを向上させるためにエラーを減らす方法を深く理解しているからこそ、達成し得ることなのです。

こうした技術向上のためには、才能ある科学者やエンジニアが各専門分野に精通しているだけでなく、彼らが改良に向けたビジョンを描き、そしてそれを実行に移すことができるということが非常に重要です。これらの検証されたエラーモデルは、将来のシステム設計の礎となるだけではありません。これらのシステムにはよく理解されたエラーモデルが備えられている、という自信が根付いているからこそ、これらのシステムの性能を体系的に改善し、最終的な性能目標を達成することができるのです。

才能ある科学者やエンジニアの価値は不変ですが、それに加えて完全で同一の量子ビットを持ち、量子電荷結合素子(QCCD)アーキテクチャを採用することは、他のアーキテクチャや様式にはない優位性をもたらします。

私たちがこの記事を通じて、Hシリーズ量子コンピュータの潜在的なユーザーにお伝えしたいこと(そして既存のユーザーがすでにご存じのこと)は以下の通りです。

1. Quantinuum は、量子コンピューティングハードウェアのコア性能を体系的に向上させることに全力で取り組んでいます。 基本性能が高ければ高いほど、エラー緩和、エラー検出、そして最終的にはエラー訂正を行う際のオーバーヘッドが少なくなります。これによって誤り耐性のある計算能力を、より自信をもって提供できるようになるでしょう。

2. Hシリーズの量子コンピュータを利用することで他のテクノロジーでは不可能な回路を実行できるようになり、ユーザーの方々は研究、活用事例、応用をより早いスピードで進めることができます。

3. Quantinuum は、大きな目標に対しても、粛々と期待を上回る成果を出す量子コンピューティング企業であり続けます。

1. https://github.com/CQCL/quantinuum-hardware-quantum-volume

2. https://quantum-journal.org/papers/q-2022-05-09-707/